歯の機能を補う
インプラント治療とは
インプラントは、医療機器などを体内に埋め込む技術、治療に用いる人工物そのものを指す言葉です。
歯科においては、顎の骨に人工歯根を埋め込んで人工歯を装着する治療を「デジタルインプラント」と呼びますが、近年は歯科におけるインプラント治療が一般的になっており、単にインプラントと呼ぶことが多くなっています。インプラント治療とは、歯を失った箇所に人工の歯根(インプラント)を埋入し、歯を補う治療法です。従来は、歯を失った治療法としてブリッジや入れ歯が一般的でしたが、近年はインプラント治療を希望される患者様が増えています。
インプラントの構造

メーカーにより違いはありますが、大まかに分けるとインプラントの構造は
① 顎骨の中に埋め込まれる部分「インプラント体」
② インプラント体の上に取り付けられる「アバットメント」
③ 歯の部分に相当する人工歯「クラウン(上部構造)」という3つのパーツで構成されています。
インプラントは歯根が頑丈だから安定するだけではなく、図のような実際の歯と同じような歯の構造に近いため、使用感が近くなると言われています。
そして上部構造の固定方法には2つの方法があります。
一つは過去主流だったセメント合着による固定方法(セメントリテイン)で、もう一つが現在主流になりつつあるスクリュー(ねじ)による固定方法(スクリューリテイン)です。
スクリューによる固定法は以前からある技術ですが、審美性に劣ることや操作の煩雑さからあまり普及していませんでした。しかし、インプラントを長期にわたる運用性を考えた時に取り外しが容易なスクリューリテインの方がメンテナンス、修理、設計の変更など柔軟に対応しやすいことが評価され現在主流になりつつあります。
インプラントの安全性
インプラントの歴史は紀元前まで遡ります。古来より研究されてきたインプラントですが、純チタンと骨の結合現象の発見により飛躍的な進歩を遂げました。世界中で様々なメーカーが研究と試験を重ね、素材や形状を研究しています。現在の私達はそうした研究の恩恵を受け、自分の歯がなくなってしまってもインプラントでまた快適な生活を送ることが可能となっています。
治療の生着率(インプラントが骨にくっつき機能する率)は、95%以上、10年後の残存率も他の治療よりも高いと言われています。 もちろんリスクを伴う治療にはなりますが、医療機器も日々進化しており、設備が整った環境であれば安全な治療方法の一つと考えられます。
インプラント治療のメリットとデメリット
メリット
- 人工歯根によりしっかりと噛めるようになります。
- 周囲の歯を削る必要がほとんどありません。
- 骨に人工歯根を埋入するため、かみ合わせが安定します。
- 噛む力の衰えを防ぎます。
- 他の治療法と比べ圧倒的な長期予後を見込むことができ、適切な状態が維持出来れば、10年で90%の生存率が見込めます。
デメリット
- 自費診療となります。
- 段階的に治療を進めていくため、治療には一定の期間がかかります。
- 術後に痛み・腫れ・出血・合併症を伴う可能性があります。
- 術後も定期的なメンテナンスが必要となり、行わなかった場合、機能が落ちやすくなります。
インプラント治療と入れ歯やブリッジの比較
歯を1~2本失った場合
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インプラントの場合
とくに前歯などの目立つ場所にある歯を失った場合は、適切な位置にピンポイントでインプラント体を埋入することが重要です。インプラントはとても繊細で、埋入する方向や角度によって見た目の美しさが変わります。山田兄弟歯科では、手術前に埋入位置や角度をシミュレーションできる専用ソフトを用いるため、最適な位置への埋入が可能です。
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ブリッジの場合
失った歯の両隣にある歯を削って「支台歯(しだいし)」という土台を作り、2つの支台歯に被せものを引っかけて、失った歯に人工歯を被せる治療法が「ブリッジ」です。噛む力を回復させられる治療ですが、咀嚼するときにかかる力がすべて支台歯にかかります。
また、健康な支台歯を削らなければ治療ができません。
奥歯を含めて複数の歯を失った場合
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インプラントの場合
奥歯を含む複数の歯を失った場合は、両隣のインプラントを支台歯にして人工歯を埋入する「インプラントブリッジ」が有効です。連続した数本の歯を失った状態で放置すると、残った歯が空いたスペースに移動するほか、欠損した箇所の歯ぐきの内側にある骨が後退します。歯並びに影響するため、できるだけ早くご相談ください。
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部分入れ歯の場合
部分的に歯を失った場合に有効な治療方法が「部分入れ歯」です。入れ歯がズレたり外れたりしないように、残っている歯と失った歯の反対側にある歯にバネを引っかけて歯を補います。上の歯には顎の中央部分に、下の歯には前歯の裏側にある歯ぐきに「バー」と呼ばれるワイヤーを通し、構造を補強して丈夫にします。
全ての歯を失った場合
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インプラントの場合
「オールオンフォー」は下顎に4本、上顎に4~6本のインプラントを埋入する治療法です。すべての歯にインプラントを埋入する場合、治療が完了するまでに長い時間がかかることが欠点でしたが、このオールオンフォーで治療をすると、手術当日にフルブリッジを固定でき、噛む機能と審美性の両方を短期間で回復することができます。
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総入れ歯の場合
全ての歯を失った場合は総入れ歯で治療を行います。高い技術で治療を行えば、総入れ歯でも確実に噛める美しい歯に回復させることが可能です。入れ歯をフィットさせるためには、表情筋や口周りの筋肉と入れ歯を調和させなければなりません。総入れ歯の治療実績が豊富な、信頼できる歯科医院で治療を受けることをおすすめします。
インプラントとその他の治療の寿命

インプラントはこちらのグラフ通り、他の治療法に比べ長持ちします。インプラント治療の10年残存率は92%です(グラフ参照)。
やり直しが少なく、いつまでも長持ちする治療法と言えるかと思います。
歯を失ったままでいるとどうなるのか?

歯を抜く理由・歯が抜けた理由は人によってさまざまです。たとえば親知らずを抜く場合など、治療の一環として抜歯をする場合は、その場所に新しい歯を入れる必要はありません。しかし「虫歯治療を中断した」「虫歯で歯が抜けてしまった」などの理由で、抜けた歯を放置し続けるのは危険です。できるだけ早く歯科医院で治療を受けるべき理由をご紹介します。
- 残った歯に負担がかかる
- 食べるときや噛むときには歯に強い負荷がかかりますが、これを複数の歯に分散してダメージを軽減しています。しかし、歯を1本でも失うと咬み合わせのバランスが崩れ、残った健康な歯にかかる負荷が増えてしまい、歯の寿命を短くさせるため要注意です。
- 発音のトラブル
- 大きな隙間がある状態のデメリットは「見栄えが悪くなる」だけではありません。歯が抜けた箇所からは空気が漏れるため、「サ行」「タ行」「ラ行」などをハッキリと発音できなくなります。相手が言葉を聞き取りにくくなるため、話す仕事をしている人は注意しましょう。
- 虫歯や歯周病のリスクが上がる
- 歯を失って隙間が生まれると、その場所に向けて他の歯が移動してしまいます。結果的に、歯と歯の間の隙間が広がるなどの影響が出ることも、抜けた歯を放置するデメリットです。隙間の形が変わると歯磨きをしにくくなり、虫歯や歯周病のリスクが上がります。
- 顔つきの変化
- とくに前歯を失うと、顔つきが変わったことがコンプレックスになり、人前で話したり、笑ったりしにくくなる人が多いでしょう。反対に奥歯を失うと、前歯を使って咀嚼せざるを得なくなり、咬み合わせのバランスが崩れて、出っ歯になってしまうリスクもあります。